紛争地帯で子どもたちが殺されたというニュースを最近よく聞きくね。一体、何人の子供が亡くなっているの?
子どもと武力紛争に関する国連報告書によると、2023年には世界各地の紛争で11,649人の子どもが殺害(5,301人)もしくは重傷(6,348人)を負っています。
殺害が確認された子どもの約40%(2,051人)は、2023年10月7日から12月31日の間にガザ地区で確認されたものです。
下の図は、過去5年間の年間の子どもの殺害数を示しています。
2023年に殺害された子どもの数は、2022年と比較して約1.8倍に増加しました。
ガザ地区では、戦争が始まって以来、14,000人以上の子どもが殺害されていて、17,000人の子どもが保護者のいない、または離ればなれになった状態であると推定されています(2024年5月9日現在)。
2024年6月現在、ガザ地区全体で大人も含めると合計37,396人が殺害されているとなっていますが、こういった暴力行為による直接的な死者に加え、忘れてはいけないのが間接的な死者です。
近年起きた紛争からのデータを踏まえると、間接的な死者数は直接的な死者数の3~15倍と推定されます。つまり、ガザ地区の成人および子どもの死亡数は、記録されている殺害数よりもはるかに多いと考えられます。
こんな恐ろしい状況が子どもたちに起きているなんて、ひどすぎる。どうして世界を動かしている大人たちは子どもをきちんと守ってくれないんだろう。
人道法では、戦争で殺されたり負傷したりした子どもたちについてどのように言っているの?
子どもの殺害や傷害は、国連安全保障理事会が特定した「子どもに対する6つの重大な違反行為」の1つです。
また、子どもの殺害や傷害は、以下に挙げられている条約や人道法に対する重大な違反行為となります。
– ジュネーブ条約
– 子どもの権利条約
– 慣習国際人道法
– その他の国際/国内人道法
例えば、慣習国際人道法第135条では、国際的/非国際的な武力紛争下での子どもに対する特別な尊重と保護について言及しています。
子どもたちは紛争下においても、医療や食料、教育を受けられるべきであり、また、子どもに対する拷問、虐待、放置は厳しく禁止されています。
国際刑事裁判所ローマ規程では、第6条と第7条でジェノサイド (大量虐殺)と人道に対する罪 (殺人、住民の強制移送、投獄など) について規定しています。子どもは、それぞれの国や民族の未来を代表する存在であるため、特にジェノサイドの標的となる可能性が高く、また、人道に対する罪の直接の被害者になりやすい存在です。
ローマ規程第8条では、戦争犯罪にあたる行為が列挙されており、これには故意の殺害、民間人および民間施設に対する意図的な攻撃などが含まれます。
子どもは、あらゆる形態の戦争犯罪の影響を受け、特に、意図的な飢餓や、学校、医療施設、人道組織に対する意図的な攻撃は、子どもたちにより深刻な被害を与えます。
大量虐殺は歴史の教科書で読むような昔の出来事だと思っていたけど、そんなことはなくて、戦争犯罪は今でもたくさん起こっているという事実に愕然とするね。
世界は道徳や人道を無視しているし、人道法を尊重しなくなってきているように感じるよ。
人道と人権は尊重されるべきだし、誰にとっても平等であるべき!
戦争は子どもの健康にどのような影響を与えるの?
戦争下において、子どもの健康に関する問題は、死亡だけでなく身体的負傷から病気まで多岐にわたります。
主なものは以下の通りです。
- 死亡
- 傷害(例:穿通傷、鈍的外傷、火傷)
- 障害
- 急性呼吸器感染症
- 下痢
- 皮膚疾患
- 栄養失調
- 精神疾患(不安、うつ病、PTSD、睡眠障害など)
- 拷問、身体的および性的虐待、放置
- ワクチンで予防可能な疾患の再興(例:ポリオ)
身体的な傷害の主な原因は銃撃、爆発、建物の倒壊であり、様々な論文から得たデータによると、負傷した子どもの3 ~18% が亡くなっています。
また、外傷を負った子の死亡リスクを調べると、年少の子どもは年長の子どもに比べて有意に高くなります。
クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナでの調査によると、戦争関連の傷害を負った子どもの 40% が永久的な障害を負っています。
このデータは、健康問題は子供にとって短期的な問題だけではなく、生涯にわたる問題であることを示しています。
また、私たちは戦争中というと身体的傷害に目を向けがちですが、子どもたちは内臓疾患やメンタルヘルスの問題にも直面しています。
呼吸器感染症、下痢、発熱は、どの国でも子どもによく見られる問題ですが、こうした健康問題の多くは、適切な医療、良好な衛生状態、良好な栄養状態によって解決できることが多いです。
でも、戦争中の子どもは、医療を受けること、十分な食料や水を得ること、適切な衛生状態を維持することが困難なため、こうした治すことができる病気が、子どもたちの死因となってしまうことが多くあります。
子どもたちがこんなにたくさんの問題に直面していることを考えると、胸が張り裂けそう。大人たちが起こした戦争のせいで、子どもたちがこんなふうに苦しまないといけないなんて間違っているよね。
世界の指導者たちが恐ろしい戦争をすぐに止めて、子どもたちが子どもらしく生きられるような世界にするにはどうすればいいんだろう。
紛争下でのメンタルヘルスとワクチン関連の病気については、また別の機会に話そうね。
References
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