子どもの貧困って具体的にはどういうことを言うの?
まずは、「貧困」の定義を確認しましょう。
貧困といっても色々な指標がありますが、ここでは絶対的貧困と相対的貧困を見ていきます。
絶対的貧困:
生きる上での必要最低限の生活水準に達していないこと。
世界銀行では、1日に2.15ドル (325円*)未満で生活している状態を絶対的貧困としています。
*1ドル=151円
相対的貧困:
国や地域において、その社会の中の大多数と比べて貧しいこと。
SDGs(Sustainable Development Goals) でも貧困は一番に挙げられている項目です。
2030年までに「貧困をなくす・減らす」という目標がかかげられています。
日本でいう『子どもの貧困』とは、相対的貧困をみていて、貧困線よりも低い所得で生活している18歳未満の人のことをいいます。
貧困線とは、世帯人数などを考慮して計算した所得の中央値の半分のことです。
貧困線の定義は難しいので、より簡単に理解できるよう具体的な数値で見てみましょう。
下のステップ1から5までを、その下のイラストを一緒に見ながら読んでみて下さい。
- Step 1家族の人数などを考えたうえで計算された所得の順に、低い人から高い人まで、その国に住んでいる全員を一列に並べます
- Step 2所得の上から数えても、下から数えても、ちょうど真ん中になる人を探してみます
- Step 32021年の日本は、254万円の人が真ん中でした (=所得の中央値)
- Step 4254万円を2で割ります (=貧困線)。つまり127万円が日本の貧困線となります
- Step 5下の図の赤い色になっている人たちの収入は127万円よりも低いので、この人たちが相対的貧困の状態で生活しているといえます
貧困で困っている子どもって、日本にどのくらいいるの?
日本における子どもの貧困は、2021年のデータで11.5%でした。
つまり、おおよそ9人に1人の子どもが貧困の状態といえます。
9人に1人の子どもが貧困って、思っていたよりも多いな
他の国との比較のため、下のグラフをみてみましょう。
2019年から2021年の平均の子どもの貧困率をみると、日本はアイルランドやベルギーと同じくらいの割合になっています。
アメリカ合衆国とかルクセンブルクはお金持ちの国というイメージがあるけど、子どもの貧困率が高くて驚いたな。
日本での子どもの貧困の原因は?
日本での子どもの貧困の原因は沢山ありますが、主なものとして
☆ ひとり親世帯
☆ 親が非正規雇用
☆ 公的支出の少なさ
が挙げられます。
ひとり親世帯の貧困率は45%と高く、その中でも特に母子家庭では生活が困窮しているケースが多くみられます。
下のグラフは、母子家庭と父子家庭での平均就労収入 (働いたことで得るお金)を比較しています。
母子家庭での一年間の収入は、父子家庭と比較して、半分以下と大きく下回っています。
雇用形態が同じ人 (正規雇用)や同様の職業の人 (専門職・技術職)での収入を比べてみても、母子家庭の方が父子家庭よりも大きく下回っているのがわかると思います。
また、母親と父親では正規雇用の割合にも大きな違いがあり、男性の方がより多く正規雇用を受けています。
このように性別が影響して、母子家庭の方が収入面での問題が大きくなっています。
性別でこんなに収入が違うって問題だよね
次は子どもの貧困が、子どもの健康面にどのような影響を与えるか見ていきます。
→ 日本における子どもの貧困 (2): 健康問題
参考文献
‐ Royal College of Paediatrics and Child Health (RCPCH). Child poverty. https://stateofchildhealth.rcpch.ac.uk/evidence/family-and-social-environment/child-poverty/
– UNICEF. Child poverty. https://www.unicef.org/social-policy/child-poverty
– The World Bank. Global Trends in Child Monetary Poverty According to International Poverty Lines. https://www.worldbank.org/en/topic/poverty/publication/global-trends-in-child-monetary-poverty-according-to-international-poverty-lines
– Unicef data. Goal 1 No poverty. https://data.unicef.org/sdgs/goal-1-no-poverty/
– 厚生労働省。2022年国民生活基礎調査。https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html
‐ 厚生労働省。国民生活基礎調査に関するQ&A(よくあるご質問)。https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21a.html
– SDG Magazine. https://sdgsmagazine.jp/2023/08/10/10559/
– ユニセフ。レポートカード18。https://www.unicef.or.jp/news/2023/0208.html
– 公益財団法人 東京都市町村自治調査会。基礎自治体における子どもの貧困対策に関する調査研究 報告書。https://www.tama-100.or.jp/contents_detail.php?co=kak&frmId=667
– 日本財団。日本財団ジャーナル。ひとり親家庭の貧困率は約5割。子育てに活用できる国や自治体の支援制度。https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2023/86934/childcare
– 子ども家庭庁。子供の貧困対策大綱における指標。https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/72e91230-ee19-49d2-b94b-15790ab6d57d/cbf19fb3/20231117_councils_shingikai_kihon_seisaku_bZi2mq96_30.pdf
– 厚生労働省。令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告。https://www.moj.go.jp/content/001388754.pdf